ふたつのさくら

下駄箱で靴を履き替えて、教室に向かう。

1階の、中庭の真横。

中央に立っているヤナギの木が、今日も風に吹かれて、枝を揺らしていた。

隣の朔羅の席には、荷物が整頓して置かれている。

そう、隣の席。

もう5月になるからー、って言って、先週、席替えしたのである。

席順はくじ引きだから、完全ランダム。

なのに私たちの席は隣になった。

もうこれは、運命でしょ?!

……まぁ、4列目と5列目なんで、ペア活動とかはないけど。

それでも隣にいるなんて、ちょーハッピー!

自分の荷物を片付けて、机の中から本を出す。

しおりを外して、読み始めようとしたところで、廊下のほうから名前を呼ばれた。

「さくちゃーん!ちょっといい?」

隣のクラスの女子生徒の声だった。

ちなみに、同じ学年の人は、私のことをさくちゃん、朔羅のことをさっくんって呼んで、区別している。

「はーい!」

本にしおりを挟んで、立ち上がる。

机の間を縫うようにして、入り口の扉へと向かった。

出入りする人の邪魔にならないように廊下の窓側に寄る。

「知夏、どうしたの?」

「今度のクラス間レクの話なんだけどさ、」

クラス間レクとは、そのままクラスを跨いでのレクリエーションのことだ。

毎年、この時期になると体育館、運動場、テニスコートで、各学年で何かしらやる。

2クラスしかないから、毎年やる必要なんてないんじゃないかなー、って思うけど、なぜか毎年やるんだよね。

高校1年生の私たちは、今年は体育館でバレーをやることになっている。

私は学級委員だから、こういったことの伝達をすることが多いのだ。

「うん、なんかあった?」

連絡事項を聞いて、教室に戻る。

どうってことない。

ちょっとしたルールの変更があっただけだ。

朝のショートで言い忘れないようにしないと。

私は筆箱から付箋を取り出し、さっき言われたことを書いて机に貼った。

よし、これで忘れない。

さて、今度こそ本を読もう!