ふたつのさくら

僕はそのまま説明を続けた。

「これ、頑張れば戻るんです。でも無意識に色が変わってたり、戻すのが辛いことがあってですね。それに、変わってても自分じゃ気づけないですから。」

「他の人が見たら驚くから、カラコン……。」

考えながら、先生は言った。

理解が早くてありがたい。

「あとは紅目になって、そっちでカラコン疑われるのも嫌なので。」

だったら黒のカラコンを入れといて、それが原因で怒られたほうがいい。

校則を違反してるのは事実だから。

先生はずっと考えている。

僕は目を閉じて深呼吸した。

全てを仕舞い込むように、なにも感じられなくなるまで、深く、深く沈み込むように。

念入りに10回はそうして、目を開ける。

そして、菖蒲に聞いた。

「どう?」

「紅いな。」

「えぇ……?」

いつもならこれで戻るんだけどなー。

今日はどうもおかしい。

おかしいのに元気っていう、矛盾した状態だ。

菖蒲がまた僕の手を握って、幻術をかけてくれた。

「……よし、分かった。」

ずっと何かを考えていた先生が声を出した。

「生活指導の先生には、俺から話を通しておこう。どこまで話していいんだ?」

先生、やっぱりよく分かってるね。

「病気ってことにしておいてください。あまり人に知られたいことでもないので。必要なら自分で話します。」

先生は黙って頷いた。

よし、まずはこれで、見た目は気にしないで良くなった。

「じゃふたつ目。」

ぶっちゃけ先生にとっては、これが1番ハードル高いと思うんだよな。

「僕を、廊下側の1番後ろの席にしてください。」

先生はポカンとして、口を開いた。

「……へ?それだけ?そんなことでいいのか?さっきのカラコンのほうが……」

「僕が授業を抜け出すことを許してください。」

先生の言葉を遮って言った。

先生の動きが止まる。

僕は下を向いて続けた。

「……こんな状態でも、学校には来たいんです。咲良さんには会いたいんですよ……。」

咲良さんが、自分にとっての1番の毒だと分かっていても。

僕が、咲良さんにとっての1番の危険因子だとしても。

それでも、一緒にいたい。

それは、わがままですか?