ふたつのさくら

「すいません。すっかり忘れてました。もう大丈夫ですよ。なんですか?」

「なんですかって……」

ちょっと菖蒲と同じ扱いしちゃった。

すんません……。

先生は気を取り直して、ハキハキと話始めた。

「とりあえず、担任の前で殺すだの殺されるだのの話はやめてくれ。物騒だから。」

「はーい。」

「すいません……」

菖蒲はすごく申し訳なさそうに言ってたけど、僕はそうでもない。

まぁ、身近な話だから。

岡崎先生は話を続ける。

「それで、徒野は死ぬつもりだと。」

「はい。」

菖蒲が言ってた通りだ。

「なんで?」

……それ聞きます?

さっき菖蒲が言ってたのが全てなんですけど……。

でも聞かれたから、呆れながらも答えた。

「だから、咲良さんを守るためです。」

あえて言うなら、そうだなぁ。

「もっと言うと、僕のためです。」

先生は訳がわからないって顔をした。

話を続ける。

「僕が、咲良さんを傷つけたくないから、他の誰も、傷つけたくないから、そうする前にいなくなろう、ってことですね。」

納得したような、納得してないような顔だ。

別に構わない。

とりあえず、僕はそう思ってるってことが分かってくれれば、それでいい。

「……そんな結末を迎えないためには、どうすればいいんだ……?」

躊躇いがちに聞いてくる。

菖蒲は心配そうに僕を見るが、僕は大丈夫だ。

ちゃんと自分で説明する。

「……避けることは無理ですね。遅かれ早かれ、そうなります。」

先生が下を向いた。

こんな、ただの生徒にすぎない僕に、肩入れしすぎじゃない?

「でも遅らせることはできるでしょう。せいぜい僕の負担を減らす程度ですが、何もしないよりはマシ、って感じですね。」

そもそも今日はそれを頼むつもりだったのだ。

暗い顔は変わらないが、岡崎先生は少し顔を上げた。

「先生に頼みたいことは主に3つです。菖蒲、術解いて。」

「はいよ。」

指示を出すと、すぐに術を解いてくれる。

先生が、無言で驚いた顔をした。

「まずひとつ目です。カラーコンタクトの使用許可をください。」

先生はなんて言おうか少し悩んで、言葉を発した。

「……いきなり校則違反かよ。」

ツッコむのそこかよ。

「あはは……でもこれが1番ハードル低いんですよねぇ……。」

「マジかよ……。」

先生がげんなりした顔でつぶやいた。

残念ながらマジです。