ふたつのさくら

「……はぁ。朔羅、せめてさ、うちに相談しろよ。なんかしら、力にはなるからさ……。」

悲しそうに、そう言ってきた。

それに合わせるように、先生も口を開いた。

「えとー、俺、も……話きくよ……?」

でもごめんなさい。

今は菖蒲と話さないと。

「先生、ちょっとだけ黙っててもらえますか?」

圧強めで言うと、先生はしょんぼりとして引き下がり、菖蒲は先生を憐れんだ目で見ていた。

僕は菖蒲に向き直って言う。

「……菖蒲に相談なんてするわけないじゃん。だって菖蒲、生かそうとするでしょ?」

菖蒲は不機嫌そうな顔になって、「ちっ」と舌打ちをした。

図星ってことだね。

どれだけ一緒にいたと思ってるのさ。

菖蒲が僕のことがよく分かるように、僕も、菖蒲のことは大体わかるんだよ。

話を続ける。

「菖蒲は優しいからね。『死ぬな』なんて無責任なことは言わない。だけど、僕の限界が来るその瞬間まで、僕を生かそうとする。」

どれだけ僕がダメだと思っていても、菖蒲はあの手この手で死なせてくれないだろう。

嫌なんだよなぁ。

死ぬときは、スパッと死にたい。

菖蒲はただ黙って聞いていた。

「それでもし僕が本当にダメになったら、この手で咲良さんを傷つけそうになったら、自分の手でトドメを刺す。汚れ役を自ら買って出るんだ。違う?」

菖蒲は悔しそうに歯噛みして答えた。

「……はっ、完璧だよ。何も違わない。」

皮肉かよ。

僕の目を見て、真剣な表情で続ける。

「朔羅を生かす者としての責任は取らないといけないからね。いざとなったら殺してやるよ。そんで寂しくないように、一緒に逝ってやる。」

……わを。

そこまで考えてるとは思わなかった。

でも、そっか。

それなら安心かもな。

僕は笑って答えた。

「楽しみにしてるよ。」

「あのー……俺、もう話していい……?」

岡崎先生が、恐る恐るといった感じで声をかけてくる。

あ、先生いたんですね。

すっかり忘れてました。

菖蒲も同じようで、先生に声をかけられて、ビクッとしていた。