ふたつのさくら

「まず、朔羅は人間としての面と、妖怪としての面を持っています。これは後天的にじゃなく、おそらく生まれたときからのものです。」

確か、朔羅は死産だと思われていた。

強すぎる妖怪の力に体が耐えられなくて、生まれた瞬間鼓動をやめた。

なんとか蘇生できたから、今生きてるんだけど……。

これが1度目。

「幼いときに、とある出来事がきっかけで、文字通り死ぬほどの努力をして、今みたいに制御できるようになりました。」

俺はその場にいなかったから分からないけど、多分見たんだろう。

5歳のお披露目の日に、自分と同じような境遇の少女が、自分とは全く違って、元気に過ごしているのを。

それで悔しくて、羨ましくて、頑張った。

そのときも、頑張りの反動なのか何なのか、朔羅の呼吸が止まった。

これで2度目。

「でも、その制御が、最近出来なくなっているんです。原因は分かりません。妖怪の力が強くなったのか、無理に抑えていたものに限界が来たのか……。」

俺としては後者だと思う。

どう考えても朔羅は異常だ。

人の身には強すぎる力を自分の中にしまい込んで。

普通じゃないのに普通のフリして生活して。

毎日出会う、大好きで大切な婚約者を喰らいたくなる衝動を抑えて。

限界が来るのも道理だ。

「……これが、今の朔羅です。ここからは俺の憶測ですが、これからの朔羅のことになります。」

何も言ってこないから分からないけど、どれだけお前の面倒見てきたと思ってる。

この先お前がどうするかなんて、手に取るようにわかるさ。

「かなりショッキングな内容ですが……聞きますか?」

「……もう、何がきても驚かないさ。」

先生は覚悟を決めた目をしていた。

じゃあ、大丈夫か。

「……多分ですけど、こいつ、死ぬ気です。」