ふたつのさくら

……「徒野」

それは古くから妖怪退治を生業としている家だ。

妖怪とは、普通の人には見えない存在。

人に友好的なものもいるにはいるが、その多くは人を食料としてしか見れない。

妖怪の力の糧となる「霊力」の高い人間を襲っては喰らっている。

僕らにはそんな妖怪を祓って人々の生活を守る役目があるのだ。

僕はとある事情で早くに当主の座を降りた父親の後を継いで、当主としていろいろやっている。

この地域ではちょっとした有名人だ。

岡崎先生を家に案内する。

「……でかいな。」

「本家ですから。」

岡崎先生のもらした感想に簡単に返した。

僕らの目の前には大きな日本家屋が建っていた。

ここが僕の家、徒野の本家だ。

ここを中心として、日本全国に分家があったりなかったり……。

玄関に入り、靴を脱ぐ。

音を聞きつけたのか、玄関のすぐ横の部屋の襖が開き、小学生ほどの男の子が飛び出してきた。

「兄さんおかえり!」

そう言いながら僕に飛びついてくる。

僕はそれを受け止めながら答えた。

「凍夜、ただいま。」

彼は僕の弟、徒野凍夜。

徒野家の正式な跡取りだ。

まだ7歳で、常識とかマナーとかがちょっとずつ欠けてるからか、こんな言葉が飛び出した。

「兄さん、このおじさんだれ?」

口を塞ぐ間もなかった。

一瞬時が止まったあと、僕の隣で崩れ落ちる人が1人。

「おじさん……」

かなりショックを受けているようだった。

「……こら!凍夜、お客さんに失礼でしょう?!」

慌てて叱って、先生に向き直る。

「先生すいません。しつけがなってなくて……」

「いやいいんだ……どうせ俺はおじさんだから……。」

思ったよりも傷は深かった。