ふたつのさくら

「……化野菖蒲。朔羅の徒野とは違って、化ける野原の化野ですね。朔羅の家の分家筋です。」

徒野の1番近くに位置する分家、化野。

本家の徒野は妖怪の力を使って妖怪を祓う。

「うちの家は幻術を使うんです。ちょっと手、貸してください。」

先生は不思議そうな顔をしながらも手を差し出す。

俺はその手を握って、先生に鏡を見せた。

「は?!」

先生が驚いたように声を出して、椅子からガタッと立ち上がった。

それにより手が離れ、幻術は解けた。

「い、今……目が、赤く……」

「はい。うちは触っているものの姿を変えることができます。まあ、頑張れば触っていなくてもできるんですけど……。」

えっとなんの話だっけ?

……あ、そうだそうだ、俺の話。

先生が椅子に座ったのを確認して口を開く。

「で、そんな幻術を扱う化野家の次期当主が、うち。ついでに朔羅のいとこで、現医大生。こうやって朔羅のメンケアと体調管理をしています。」

ね?情報量多いでしょ?

「あとあるとすれば……去年のここの首席卒業生ってことですかね?」

そろそろ大丈夫かなー、と思って足をどかす。

血はちゃんと止まっていた。

よしよし。

持ってきていたカバンから包帯を出して、朔羅の手のひらにキツく巻きつけた。

「……は?!え?女じゃ、ない……?」

一連の作業が終わるまでずっと黙っていた先生が、いきなり大声を出した。

びっくりした……。

「失礼な。れっきとした男ですよ。」