ふたつのさくら

「まず、何から聞きたいですか?」

いや、先に全部話してからのほうがいいか?

どっちでもいっか。

先生は少し困ったような顔をしてから、口を開いた。

「えっと……なんで止血……?」

とりあえず目の前の疑問から!

って感じか。

「切らせたんですよ。手のひら。朔羅にとっての精神安定剤みたいなものなんです、これ。」

短刀を見せながら言う。

どうかしてると思うだろ?

俺も思う。

でも朔羅にとっては間違いなくそうなんだよ。

先生は絶句していた。

まぁ、自分の生徒が刀持ち歩いてて、それで自分の体を傷つけることで精神を安定させる、なんて普通じゃないもんな。

単なる自殺行為だ。

「正気を保てなくなったときとか、無意識に危険だと思ったときとか、自分を傷つけるんです。」

昔はひどかった。

毎日毎日、同じところに傷をつくって。

痛々しかった。

傷もそうだし、それでしか自分を保てなかった朔羅が。

「最近はその衝動は少なくなってきました。でも持ち歩いてるってことは、必要だった、ってことですね。さすがに学校で使ったのは初めてだと思いますけど。」

持ってるだけでも安心するんだろう。

いざとなったときのための備えがあれば、最終手段でも、それに頼ることができるから。

「……はい、この短刀の話はこんな感じですね。」

先生は話が飲み込めない、という感じで黙っていた。

これは、俺が話しても多分聞いてないな。

聞かれたことに答えるほうが良さそうだ。

「……あの、菖蒲さん?は何者なんですか?」

え?それ?

「今それ聞きます?」

なんかもっと聞くことあるんじゃない?

さっきの朔羅の状態はなんなのか、とか。

薬って何、とか。

今日わざわざ先生を呼び出した理由……は確証はないけど多分わかる。

「いや、ちょっと情報が衝撃すぎて、あまり重要そうじゃないのを……。」

あー、そういうことね。

でもいいの?

俺のことも、別の意味では結構衝撃よ?