ふたつのさくら

……そして、その瞬間が来た。

朔羅の動きが緩んだ瞬間、俺は朔羅の首を掴み、ソファに叩きつける。

「ぅおりゃ!!」

「がっ、は……」

朔羅から息が漏れる。

柔らかいところだから、そんなにダメージはないはずだ。

朔羅の体から力が抜ける。

「おい、朔羅。しっかりしろ!」

手は離さないで声をかける。

朔羅は何度か咳き込みながら、走ったあとのような荒い呼吸を繰り返していた。

そのまま待っていると、朔羅の目が開く。

まだ紅いままではあるが、焦点は合っていた。

ひとまず戻ってきたかな。

「朔羅、うちのこと、分かる?」

朔羅は弱々しい声で、答えた。

「……あや、め……ご、め……」

「いいって。」

首から手を離す。

俺のことが分かるなら大丈夫だろう。

「朔羅、ちょっと待ってろ。」

頷くのを確認してから立ち上がり、部屋の外に出た。

そこでは岡崎先生が落ち着かない様子で廊下を行ったり来たりしていた。

不審者だ。

手には朔羅のリュックを持っている。

先生は俺が出てきたことに気づくと、すごい勢いで話しかけてきた。

「大丈夫ですか?!あれは、なんなんですか?!徒野は無事なんですか??!」

あーもう。

1個ずつ聞いてくれ。

「とりあえず、朔羅は無事です。全部説明しますけど、もう少しここにいてください。あと、そのカバンちょっと見せてもらっても?」

若干呆れながら言うと、先生は引き下がって、リュックを見せてくれた。

多分朔羅は持ってきてるはず。

使ってはいないだろうけど、無いよりはあった方が安心するんだろう。

リュックの外側についている小さなポケットに手を入れると、木の感触がした。

……ほら、持ってた。

そこから20センチほどの短刀を取り出す。

先生はそれを見て怯えたように声をかけてきた。

「あの、それは?」

……この人、どんな人なんだろ。

素直に答えていいものか、誤魔化すべきなのか……。

まぁ、見れば刀だって分かるし、分かってるから怯えてるんだろうし、いいか。

「……短刀です。刀。朔羅のものですね。」

「え……っと、は?」

いろいろ聞きたいことがあるんだろう。

「とにかく、あとで全部話しますから。」

強引に話を終わらせて、朔羅の元に戻った。