ふたつのさくら

菖蒲はそのまま窓から中に入ってくる。

通話を切って、携帯をポケットに入れながら僕の方にやってきた。

「最後に飲んだのは?」

僕の前に屈んで聞いてくる。

「……朝ごはん、の、あと……」

目を逸らして答えた。

菖蒲は少し考えて、やっぱり笑顔で言った。

「朔羅、嘘はよくないよ?」

「……」

「辛くても、キツくても、しんどくても。2時間経つまではダメだって、何回も言ってるだろ?」

そう言って頭を撫でてきた。

そのままの状態で、先生に声をかける。

「……先生、朔羅のこと、知ってるんですよね?」

急に出てきた菖蒲に驚いてフリーズしていた先生は、その声で現実に戻ってきたらしい。

おかえり。

「……あ、あぁ。人間だけど、妖怪だっていうことくらいだが……。」

「……そうですか。」

菖蒲は少し考えてから僕を持ち上げて、先生が移動させたソファの上に寝かせた。

そして持ってきてたカバンから注射器を取り出して、それを僕の腕に差し込んだ。

チクリとした痛みが走る。

中のものを全て押し込み、針を抜いて、また頭を撫でた。

「……とりあえず寝てな。」

菖蒲は睡眠薬が効いて、僕が眠るまでそうしていてくれた。