父とスティーブンはこの後のことを相談するからとセリーナは部屋を追い出された。
婚約破棄を含め、あとは任せておきなさいと。
自分の部屋に戻ったセリーナは剥げたメイク、泣いた後の酷い顔、地味なブラウンのドレスに固めた髪の残念な自分の姿に慌てた。
「……こんな姿なのに求婚してくださるなんて」
しかも相手は騎士団長のスティーブン。
背が高く、たくましくて、頼り甲斐がある素敵な男性だ。
公務の時、足場が悪い場所は手を引いてくれたり、視察中に不審者が近づこうとした時にも助けてくれた。
王太子から無理難題を言われた時には一緒に解決策を考えてくれたり、当然のように騎士を手配してくれたり。
そういえばずっと私のそばにいてくれた気がする。
その事実に気づいてしまったセリーナは両手で真っ赤な顔を押さえた。
……どうしよう。婚約すると言ってしまった。
セリーナはスティーブンの求婚を思い出し、緩んでしまう顔を我慢することが出来なかった。
◇
「おはよう、セリーナ」
「スティーブン様!? は? えっ? なぜここに?」
翌朝、いつものように家族で朝食を摂るためにダイニングへやってきたセリーナは、心臓が飛び出るのではないかと思うほど驚いた。
父、母、弟。ここまではいつも通り。
だがスティーブンがいるのはなぜ?
「お仕事は……?」
「退職した」
「はい!?」
王宮騎士団は選ばれし者しか入れない。
さらに第一騎士団と第二騎士団は花形だ。
そこの騎士団長があっさり退職って!
「ど、ど、どういう……」
スティーブンは戸惑うセリーナに手を差し伸べ、椅子までエスコートしてくれる。
騎士だけれどやっぱり公爵子息なのね。
なんて感心している場合ではない!
「今日からスティーブン・ドイルになった」
レント国のオークウッド公爵家からカヤ国のドイル公爵の養子になったと説明されたセリーナは、思わず水でむせてしまいそうに。
「カヤ国? ドイル公爵? 養子?」
カヤ国は隣の国だ。
「食べ終わったらすぐ領地に出発する」
「ま、待ってください、お父様。今日?」
「娘が婚約破棄された国になど居たくない。今日から我が領地ダンヴィルはカヤ国の領土だ」
ちなみに爵位はそのままカヤ国のダンヴィル公爵だと意味がわからないことを言い出した父の言葉にセリーナは困惑した。
「セリーナとスティーブンの婚約はすでにカヤ国王に許可を頂いた」
「カヤ国の国王陛下!?」
父が管理しているダンヴィル領はここレント国とカヤ国の国境にあり、領地の多くは山。
冬は厳しい環境で食料を作るには向いていないが、ダイヤモンドのおかげで領地は潤っている。
10年前、未曽有の干ばつ被害に遭った時、ダンヴィル領が無償でダイヤモンドを王家に提供した。そのおかげで他国から食料を輸入することができ、国民を守ることができたそうだ。
王太子妃教育で干ばつがあったことは習ったが、まさか私を王太子の婚約者にすることを条件にダイヤモンドを提供していたとは知らなかった。
もし婚約を破棄することがあれば、当時のダイヤモンド代の支払いはもちろん、ダンヴィル領はカヤ国の領土となり、今後一切レント国にダイヤモンドを提供しないという内容が契約書には記載されていると父は教えてくれた。
婚約破棄を含め、あとは任せておきなさいと。
自分の部屋に戻ったセリーナは剥げたメイク、泣いた後の酷い顔、地味なブラウンのドレスに固めた髪の残念な自分の姿に慌てた。
「……こんな姿なのに求婚してくださるなんて」
しかも相手は騎士団長のスティーブン。
背が高く、たくましくて、頼り甲斐がある素敵な男性だ。
公務の時、足場が悪い場所は手を引いてくれたり、視察中に不審者が近づこうとした時にも助けてくれた。
王太子から無理難題を言われた時には一緒に解決策を考えてくれたり、当然のように騎士を手配してくれたり。
そういえばずっと私のそばにいてくれた気がする。
その事実に気づいてしまったセリーナは両手で真っ赤な顔を押さえた。
……どうしよう。婚約すると言ってしまった。
セリーナはスティーブンの求婚を思い出し、緩んでしまう顔を我慢することが出来なかった。
◇
「おはよう、セリーナ」
「スティーブン様!? は? えっ? なぜここに?」
翌朝、いつものように家族で朝食を摂るためにダイニングへやってきたセリーナは、心臓が飛び出るのではないかと思うほど驚いた。
父、母、弟。ここまではいつも通り。
だがスティーブンがいるのはなぜ?
「お仕事は……?」
「退職した」
「はい!?」
王宮騎士団は選ばれし者しか入れない。
さらに第一騎士団と第二騎士団は花形だ。
そこの騎士団長があっさり退職って!
「ど、ど、どういう……」
スティーブンは戸惑うセリーナに手を差し伸べ、椅子までエスコートしてくれる。
騎士だけれどやっぱり公爵子息なのね。
なんて感心している場合ではない!
「今日からスティーブン・ドイルになった」
レント国のオークウッド公爵家からカヤ国のドイル公爵の養子になったと説明されたセリーナは、思わず水でむせてしまいそうに。
「カヤ国? ドイル公爵? 養子?」
カヤ国は隣の国だ。
「食べ終わったらすぐ領地に出発する」
「ま、待ってください、お父様。今日?」
「娘が婚約破棄された国になど居たくない。今日から我が領地ダンヴィルはカヤ国の領土だ」
ちなみに爵位はそのままカヤ国のダンヴィル公爵だと意味がわからないことを言い出した父の言葉にセリーナは困惑した。
「セリーナとスティーブンの婚約はすでにカヤ国王に許可を頂いた」
「カヤ国の国王陛下!?」
父が管理しているダンヴィル領はここレント国とカヤ国の国境にあり、領地の多くは山。
冬は厳しい環境で食料を作るには向いていないが、ダイヤモンドのおかげで領地は潤っている。
10年前、未曽有の干ばつ被害に遭った時、ダンヴィル領が無償でダイヤモンドを王家に提供した。そのおかげで他国から食料を輸入することができ、国民を守ることができたそうだ。
王太子妃教育で干ばつがあったことは習ったが、まさか私を王太子の婚約者にすることを条件にダイヤモンドを提供していたとは知らなかった。
もし婚約を破棄することがあれば、当時のダイヤモンド代の支払いはもちろん、ダンヴィル領はカヤ国の領土となり、今後一切レント国にダイヤモンドを提供しないという内容が契約書には記載されていると父は教えてくれた。



