王太子に婚約破棄された地味令嬢ですが、病める時も健やかなる時も騎士団長から愛されるなんて聞いていません!

「スティーブン様は優しくて男らしくて頼りになって、とても素敵なんです」
「ホント最高!」
 セリーナの言葉になぜか同意するアンジェラは意味が分からないけれど、スティーブンの魅力はアンジェラにも伝わっているみたいだ。
「私はスティーブン様と幸せになるので、レイド国のエリオット王太子殿下はアンジェラとどうぞお幸せに」
「おい、セリーナ。この俺が側妃にしてやるって言ってるじゃないか」
 意地を張るなと言うエリオットにセリーナは溜息をついた。
 前から会話は通じないなと思っていたけれど、ここまでとは。
「努力もしない、人の話も聞かない、男として全く魅力もないエリオット殿下の側妃なんてダイヤモンド鉱山をもらってもお断りです」
「なんだと!」
「私はいつでも気遣い、私を守ってくださるスティーブン様に愛を誓います」
「俺もセリーナだけに愛を誓う。こんなに美しくて努力家で最高の女性を手放した見る目がない男には消えてもらおう」
 スティーブンが手を上げると会場の警備をしていた騎士たちがスッと近づく。
「この二人を追い出してくれ」
「なっ、おい、騎士団長! ふざけるな」
「なんで私まで? セリーナなんかより私の方が綺麗で」
「おまえのどこが綺麗だと?」
 見た目も心もどこにも綺麗な所がないと笑われたアンジェラは悔しそうに唇を噛んだ。
 スティーブンはセリーナの手を引き、裏に連行されていく騒がしい二人の後ろをついて行く。
「スティーブン様? 控室はあちらでは……?」
「控室に行く前に、少しやることがあってな」
 夜会の会場の扉から出た瞬間、スティーブンは騎士たちを止めセリーナから手を離す。
 そのまま左手でエリオットのお腹に一発拳を入れると、か弱いエリオットは壁に向かって吹っ飛んだ。
「二度と俺の妻に近づくな。彼女は地味でも根暗でもない。お前がそうさせたんだ。彼女がどれだけ努力してきたか、どれだけ自由を奪われ我慢してきたか知らないくせに好き勝手なことばかりしやがって。カヤ国はレイド国との取引をすべて中止する。おまえたち二人は二度とこの国に入ってくるな!」
 青白い顔でガタガタと震えるエリオットにスティーブンは殴り足りない気持ちを抑えながら思いを伝える。
『わお、強いのね』
 ルメラヤキ語に驚いたセリーナが振り返ると、会場の扉はまだ開いたまま。
 閉めていなくてすみませんという顔をしているドアマンと、興味津々の会場のひとたち。
 大爆笑している国王陛下と頭を抱えた宰相、よくやったと満足そうな父と、苦笑しているドイル公爵の顔が見える。
 嘘でしょ、どうして扉が開いているの!?