王太子に婚約破棄された地味令嬢ですが、病める時も健やかなる時も騎士団長から愛されるなんて聞いていません!

「……カッコいい……」
 エリオットよりも背が高くたくましいスティーブンを見たアンジェラは目を輝かせた。
 セリーナのドレスも宝石も、エリオットにもらったものよりも高そうだ。
 何よりもあの髪飾りの輝きがすごい!
 地味女があんなに変身するなら、私はさらに美しくなるはず。
「ねぇ、エリオット。セリーナに仕事を全部やらせるのよね?」
「あぁ。そうだよ」
「じゃあ、エリオットが話をしている間、あっちの王太子としゃべっていい?」
「騎士団長と?」
「騎士団長? 違うわ、あの王太子よ」
「あぁ。あれはうちの騎士団長だから、アンジェラの護衛になる男だ」
「えっ? 私の護衛なの? じゃあ、私のものね」
 やったと喜ぶアンジェラを不思議に思いながらも、エリオットは美しくなったセリーナを眺め続けた。

『通訳なしで直接話ができるなんてうれしいわ! 友人になってくださらない?』
『光栄です。ぜひお願いします』
 ルメラヤキ国の王女リリスと友人になることができたセリーナは、スティーブンにすぐに報告した。
 メア国とは小麦の輸入について、ミーグ国とは湖の水質について。
 スティーブンと相談しながら回答し、どうしても返答に困るものだけ国王と相談させてくださいとその場の明言を避けた。
「すごいな、セリーナ」
「スティーブン様のおかげです。水質を測る方法は知りませんでした」
「騎士はいつでも水を調達できるようにしないと、いざという時に困るからな」
 騎士だった経験がこんなところで役に立つとは思わなかったと笑うスティーブンの笑顔に、セリーナも思わず笑顔になる。
「少し休憩しないか? 足が疲れただろう?」
「ありがとうございます」
 控室へ行こうと歩き始めたセリーナは、聞き覚えのある声に名前を呼ばれ思わず振り返った。
「セリーナ、ひさしぶり!」
 まるで友人かのように気軽に挨拶されたセリーナは、エリオットの無神経な態度に呆れる。
 相変わらず腕にはべったりとアンジェラをくっつけたままだ。
 招待状には私の名前が書かれていたはずなのに、まさかエリオットがレント国の代表として来るとは思っていなかった。