王太子に婚約破棄された地味令嬢ですが、病める時も健やかなる時も騎士団長から愛されるなんて聞いていません!

 男性は国王にセリーナとの会話を報告する。
 国王はそうかそうかと嬉しそうに頷いた。
 よかった。通じたみたいだ。
 ルメラヤキ語は勉強はしたけれど、レイド国には会話ができる人がいなくて発音があっているのか心配だったけれど、大丈夫そうだ。
「すごいな、今のは何ヶ国語だい?」
「共通語を除き、五ヶ国です」
 ドイル公爵に聞かれたセリーナは少し言葉に詰まってしまったと恥ずかしそうに答えた。
「他にもできるのかい?」
「はい。あと三ヶ国ほど勉強しました」
 勉強したが使う機会はなかったと笑うと、セリーナの手はそっとスティーブンに握られた。
 あ、心配させてしまったかもしれない。
 王太子に婚約破棄されたことを気にしていると思われたかな?
「こんなに素晴らしい二人を手放すなんてレイド国はどうかしている」
 国王の言葉にドイル公爵も頷く。
「ドイル公爵、そなたはあと10年は余裕で生きられるな?」
「そのつもりですが……?」
「スティーブン、おまえは玉座に興味はあるか?」
「ありません。セリーナを幸せにすることだけが望みです」
 ちょ、ちょっと!
 なんでそんな恥ずかしいことを平然と国王陛下に!
「ではセリーナ、そなたは王太子妃の立場に未練はあるか?」
「ありません。私はカヤ国で自分にできることを探したいと思います」
 まずはこの国のことを学ぼうと思うと答えたセリーナに国王はニヤッと笑った。
 あれ? 私、回答をミスった?
 王族のあの笑顔は危険な印象だ。
「スティーブン、おまえを10年間だけ王太子に任命する」
「……は?」
「陛下!」
 とんでもないことを言い出したとドイル公爵は頭を抱える。
「私の息子が18歳になるまで、王太子・王太子妃として国のために勤めよ」
「お待ちください、陛下。スティーブンはようやくうちに」
「異論は認めない。10年後に返してやる」
 あと10年くらい一人で頑張れと言われたドイル公爵はガックリと項垂れた。
 カヤ国王はきっと10年前もこうやって貴族の反対を押し切って、レイド国に食べ物を準備してくださったのだろう。
 セリーナは最上級の礼を国王に捧げる。
「……やはり王太子妃にふさわしい」
 いい判断だと国王は口の端を上げた。