スイーツ王子は甘くない⁉

「マンディアン。最初におまえが作ろうとしていたのは、これだろ?」

 クロくんが、持っていた袋を調理台の上に置く。

 アーモンド、ヘーゼルナッツ、干しいちじく、それからレーズン。


「トッピングは別のものでもいいが、まずは基本に忠実に。アレンジを加えるのは、慣れてからだ」


 クロくん、あの大失敗した日にわたしが作ろうとしてたもの、わかってたんだ。


「はい!!」

「……だから、うるさい」

 うれしくて思わず大声で返事をしたわたしに、クロくんが顔を歪める。


「ご、ごめんなさい……」

「手を止めるな。さっさと作業を続けろ」


 相変わらずキビシイ……。


 でも、ちゃんとわかってるから、もう泣いたりしない。

『おいしいチョコレートを、心を込めて作る』

 ただ、そのことだけを考えているんだって。


「……なにを笑ってる。気持ち悪いな」

 クロくんがぼそりとつぶやく声が聞こえる。


 それはなにげに傷つきます、クロくん。


「できました!」


 クッキングシートの上に丸く伸ばしたチョコにトッピングしてもいいんだけど、今回は型があるから、より失敗の心配なし!

 型の中にチョコを流し込んで、固まらないうちに手早く飾り付けをしたら完成だ。