スイーツ王子は甘くない⁉

 まただ。

 でも、やっぱり誰もいない。

 うーん……、気のせいなんかじゃないと思うんだけど。


「どうしたの、心愛ちゃん?」

「ううん、なんでもない」

 首をかしげるイチゴくんに、慌ててぶんぶんと首を横に振る。


 でも、この前視線を感じたあとも、特に誰かに絡まれたり因縁をつけられたりはしていないんだよね。

 本当にいったい誰なんだろう?

 気になって仕方ないよ。


「……心愛ちゃんのパフェ、なかなかゲージュツ的だね」

「へ? ……うわわっ。これじゃあさすがに食べづらいよね。あはははは……」

 考えごとをしながら作業をしていたら、気づいたらぐるぐるとうず高く盛ったホイップクリームに、カットフルーツをトゲみたいにぐっさぐっさとぶっ刺していた。


「あははっ。ボクもマネしちゃおーっと」

 イチゴくんが、どんどんカットフルーツの飾りを付け足していく。

「ねえ、見て見て、心愛ちゃん」

「うわぁ、イチゴくんのパフェ、すっごくかわいい!」

 ホイップクリームが見えなくなるくらい、びっしりカットイチゴが並んでる。


 わたしとは、やっぱりセンスが違うよ。

 こんなところでも差を感じて、軽く凹んでしまう。


「はいっ。じゃあ、交換」

 イチゴくんが、自分のグラスをわたしに向かって差し出した。

「ボク、心愛ちゃんが作ってくれたのが食べたいなー」

「い、いやいや、これはわたしがちゃんと責任を持って処理するから」


 さすがにこんなものを人様に食べさせるわけにはいかないよ。