スイーツ王子は甘くない⁉

「そうするとね、こうやって大きな気泡ができて、キメの粗いスポンジになっちゃうんだ。だから、最後は低速にして、大きな気泡をつぶしてキメを整えてあげるのが大事なんだよ」


 また手間暇を惜しんだばっかりに……。

 経験もないのに、自己判断で省くの禁止!


「でも、はじめてにしてはよくがんばったねー。あと一息だよ」


 ちゃんとレシピの指示に従わなかったわたしが悪いのに、怒らずにホメてくれるイチゴくんが優しすぎて、なんだか申し訳なくなってくる。

 でも、ちゃんと悪かったところを指摘してもらったおかげで、次はできそうな気がするよ。


「それじゃあ、このスポンジケーキもおいしくして食べよっか」

 パチンっとウインクすると、イチゴくんが冷蔵庫からホイップクリームを取り出した。

「心愛ちゃんと食べようと思って、用意しておいたんだー。それからほらっ、カットフルーツもいろいろあるよ。スポンジを一口サイズに切って、このグラスの中に入れて。ホイップクリームとカットフルーツで飾り付けしたら——」

 そう言いながら、イチゴくんが調理台の下から取り出したのは、細長いグラス。


 あっ、これって——。

「パフェだ!」

「うん、大正解!」


 すご~い。自分でパフェが作れるなんて!


 二人でワイワイ言いながらパフェの盛り付けをしていると、ふっと視線を感じて、わたしは扉の方を見た。