スイーツ王子は甘くない⁉

「それから、卵の気泡をつぶさないように、薄力粉を入れてからかなり慎重に混ぜたのかな?」

「うんっ! めちゃくちゃ気をつけてやったよ。だから、しっかり膨らんだ……んだよね?」

 若干不安になりながら、イチゴくんに尋ねる。


「うーん、惜しい! それも大事なんだけど。ほら、ここ見て。ここにも。ちゃんと混ざり切ってなかった薄力粉が白く点々と残ってるの、わかる?」

「うわぁ……ほんとだ」

「薄力粉には、卵の気泡をしっかりと支えてくれる役割もあるんだよ。でも、心愛ちゃんみたいに気泡をつぶさないようにって慎重になりすぎると、薄力粉が生地の中にちゃんと均等に行き渡らなくて、焼き上がったときは膨らんでいるんだけど、気泡を支えきれずにこんなふうにしぼんじゃうんだ」

「そっかぁ」

「それに、混ぜ方が足りないと、こうやってダマになって残っちゃう。そうすると、食感も悪くなっちゃうんだよね」


 うーん、難しい……。

 やっぱり一回ではうまくいかないなぁ。


「じゃあ、切って中の様子もチェックしてみようか」

 イチゴくんに言われた通り、まな板の上でスポンジを縦に真っ二つに割ってみる。


「あー……ちょっとキメが粗いかな。ハンドミキサーで泡立てたとき、最初から最後までずっと高速でやってたでしょ」


 バレてる……。

 だって、ちゃんと泡立ってるっぽかったし、大丈夫かなって思ったんだもん。

 ……イチゴくんのレシピには、『最後は低速で』って、ちゃんと書いてあったけど。