スイーツ王子は甘くない⁉

 夢中になって味わっていたら、エンくんがまたわたしのことをじっと見つめているのに気づいて、緩んだ顔面を必死に立て直す。


「そ、そうだ。早く片づけをしなくっちゃ。残りは、家に帰ってからゆっくりいただくね」


 こんなふうにじっと見つめられていたら、落ち着いて食べられないよ。


 マカロンの入った箱をカバンの中に入れると、ケーキクーラーの上に残っているクッキーを袋に入れて……。

『マカロンのお礼に、よかったら食べて』と言いかけ、間一髪思いとどまった。


 こんな合格点ギリギリのヘタクソなクッキーなんてもらっても、きっと困っちゃうよね。

 こっそり自分のお腹に収めるのが一番。


 そう思ってカバンの中にしまおうとしていたら、

「なあ。それ、何枚かちょーだい」

 と、エンくんがわたしに向かって右手を差し出した。


「え……」

「今日の特訓代。夜食に食いたいんだけど」

「で、でも、合格点ギリギリのヤツだし……」

「さっきはちょっとキビシイこと言っちゃったけどさ、このクッキーには、『食べた人に笑顔になってほしい』っていう心愛の心がちゃんとこもってた。技術的なとこは、これからたくさん練習すれば、絶対にうまくなる。けど、それ以上に大事なことがちゃんとできてるって、味見したとき、オレは思ったけど?」