スイーツ王子は甘くない⁉

 わたしもいつか、こんな難しそうなスイーツも作れるようになるのかな。


 わたしが近くのイスに腰を下ろすと、エンくんもすぐそばのイスに腰かける。


「左から、バニラ、チョコ、アールグレイ、ピスタチオ、それからシトロンな」

「全部違うの⁉ こんなの、もったいなくて食べられないよ~」

「腐る前に、ちゃんと食えよな」

 エンくんが、ははっと笑う。


「じゃあ、ひとついただきます」

 バニラ味のマカロンを手に取り、さっそくぱくりっ。


 う~ん、これこれ!

 外はサクッ、で、中はねっとり。

 ここがいいんだよ~。


「はぁ~幸せぇ~」

「心愛、めっちゃいい顔してる」

 気づいたら、エンくんが頬杖をついてわたしの顔をじっと見つめていた。


「そ、そんなふうに見ないでよ」

 なんだか急に恥ずかしくなって、空いている左手で顔を隠す。


「なんで? 隠さないで、ちゃんと見せてよ。オレ、好きなんだよね。オレの作った菓子食って、いい顔してる子見んの。ほら、あーん」

 エンくんが、チョコ味のマカロンを指でつまむと、わたしの口元まで持ってくる。


「だ、大丈夫。自分で食べられるからっ」

 エンくんからマカロンを取り返すと、ぱくっと大口を開けて放り込む。


「もぐもぐもぐもぐ……はぁ~、おいふぃ~い」


 口の中が幸せすぎる~。