スイーツ王子は甘くない⁉

 出入り口の方から視線を感じて、扉の方を見る。

 けど、誰もいないみたい。


「どうした、心愛?」

「う、ううん。なんでもない」

 エンくんに向かって、首を左右に振って見せる。


 でも、たしかに今、誰かに見られているような気がしたんだけど……。


 ああ、そっか! きっとエンくんのファンの子だよ。

 だって、エンくんたちはみんなから大注目のスイーツ王子。

 そんな人たちと個人的に仲よくしてるなんて知られたら、わたし……ふ、袋叩き⁉


 恐ろしいことを考えてしまって、ぶるっと身震いする。


 いやいや、そんなことよりも、今はお菓子作りに集中しなくっちゃ。


「おっ、いい色に焼けてる」

「ほんとだ。おいしそ~」


 オーブンから取り出したクッキーを、ケーキクーラーに移してしばらく冷ましたら完成!


 でもこれ、失敗作なんだっけ……。

 見た目はすっごくおいしそうなんだけどな。

 いったいなにがどう失敗なんだろう?


「そんじゃ味見タイムだな」

「うん……いただきます」


 本当にわたしが作ったんだ。

 失敗作だってわかってても、うれしすぎて思わず頬が緩んじゃうよ。


 そっと一枚手に取ると、口元へと運んでいき、パリッと一口かじる。

 ……え、なにこれ。
 
 そういうクッキー……ってわけじゃないよね?