スイーツ王子は甘くない⁉

「うん。そしたらラップの上に生地を乗っけて、直径3cmくらいの棒状に成形する」


 うわぁ、なんだかおもしろい手触り。

 ムニムニしてて気持ちいい。


「それじゃあ一度冷蔵庫に入れて、一時間くらい冷やし固めようか」


 壁際に置かれた大きな銀色の冷蔵庫の中に生地を入れ、エンくんの方を振り返る。


「で、どうだった、はじめてのお菓子作りは? ……って、聞くまでもなさそうだな。めっちゃいい顔してる」

 そう言って、エンくんがニッと笑う。


「うんっ。エンくんの教え方がすごく上手だから、すっごく楽しかった」


 わたし今、本当にお菓子作りをしてるんだ。

 じわじわとそのことを実感して、なんだか胸がいっぱいになる。


「ま、菓子作りの一番の楽しみっつったら、オーブンから出す瞬間だからな。まだまだこれからだぞ」


 うわぁ、ワクワクする。楽しみ~!


「そんじゃ、生地を冷やしている間に、道具の片づけをしておこうか」


 片づけをしたり、実習室内にあるお菓子作りの本を見ながらエンくんとお話をしているうちに、あっという間に一時間が過ぎた。


「よし。オーブンを温めている間に、生地を切って焼く準備をしていくぞ」


 天板の上に、生地がくっつかないようオーブンシートを敷くと、まな板の上で切ったクッキー生地を間隔をあけて置いていく。

 そうこうしているうちに、オーブンの予熱が完了。

 エンくんが開けてくれたオーブンの中に、わたしはそーっと天板を入れた。