私が呼びかけると、今度は穏やかな表情で振り返った。
「あの、あ、頭に、桜の花びらが……」
どのあたりに付いているかを教えるために、私は自分の頭を指さす。
彼は右手で髪を撫でた。
桜の花びらを見つけると、ますます恥ずかしそうに微笑んだ。
「恥ずかしいところばっかり見せたね。ありがとう」
そして、今度こそ彼は去って行った。
一人になり、緊張感から解放されたのか、大きく息を吐き出す。
最後にお礼を言ってもらえたことで、私は言ってよかったと思えた。
しかしながら、さっきの桜の写真。
上手く撮れたと思うけど、少しリセットさせたい。
もっと近くで撮ったら、より綺麗に残せる気がする。
中庭を横切って、桜の木に近寄る。
近くで見れば、その迫力に心を奪われた。
そして満足のいく写真が撮れるまで、何枚かシャッターを押した。
もう少し。
最後は、全体を映してみよう。
そして桜の木から離れてスマホ画面を見ていると、赤と薄桃色の世界に、金色が混ざった。
私が気付いたことに、向こうも気付いたらしい。
ちょっとだけぎこちなく、手を挙げる。
私は挨拶だと思って、頭を下げる。
彼は私に近付いてきた。
「さっきは本当にごめんね」
「いえ、全然……」
慌てたように否定することしかできない、自分のコミュニケーション能力が嫌になる。
「君、一年?」
「そうですけど……」
質問の意図が見えずに答えると、彼はにやりと笑った。
「じゃあ、先輩がいいお店に連れて行ってあげよう」
「え?」
あまりにも唐突な提案に、間抜けな声が出てしまった。
「安心して、俺のおごりだから」
そんなことは心配していない。
いや、むしろ気まずくて仕方ない。
「そんな、申し訳ないです」
彼は、抗議する私の手を引いて、進んだ。
「あの、あ、頭に、桜の花びらが……」
どのあたりに付いているかを教えるために、私は自分の頭を指さす。
彼は右手で髪を撫でた。
桜の花びらを見つけると、ますます恥ずかしそうに微笑んだ。
「恥ずかしいところばっかり見せたね。ありがとう」
そして、今度こそ彼は去って行った。
一人になり、緊張感から解放されたのか、大きく息を吐き出す。
最後にお礼を言ってもらえたことで、私は言ってよかったと思えた。
しかしながら、さっきの桜の写真。
上手く撮れたと思うけど、少しリセットさせたい。
もっと近くで撮ったら、より綺麗に残せる気がする。
中庭を横切って、桜の木に近寄る。
近くで見れば、その迫力に心を奪われた。
そして満足のいく写真が撮れるまで、何枚かシャッターを押した。
もう少し。
最後は、全体を映してみよう。
そして桜の木から離れてスマホ画面を見ていると、赤と薄桃色の世界に、金色が混ざった。
私が気付いたことに、向こうも気付いたらしい。
ちょっとだけぎこちなく、手を挙げる。
私は挨拶だと思って、頭を下げる。
彼は私に近付いてきた。
「さっきは本当にごめんね」
「いえ、全然……」
慌てたように否定することしかできない、自分のコミュニケーション能力が嫌になる。
「君、一年?」
「そうですけど……」
質問の意図が見えずに答えると、彼はにやりと笑った。
「じゃあ、先輩がいいお店に連れて行ってあげよう」
「え?」
あまりにも唐突な提案に、間抜けな声が出てしまった。
「安心して、俺のおごりだから」
そんなことは心配していない。
いや、むしろ気まずくて仕方ない。
「そんな、申し訳ないです」
彼は、抗議する私の手を引いて、進んだ。



