俺様御曹司は欲しい

ははっ、ははは……コロス。

「あの世へ逝く覚悟はおありでしょうか?九条様」

殺人鬼の形相で九条を睨み付けると『なんだこいつ』って顔しながら首を傾げてる。あたしの人生さんっざん引っ掻き回したくせに今更ポイ捨て?そんなの卑怯じゃん。

九条がいない生活なんかにもう戻れないよ、あたし。そうさせたのはあんたでしょ、最後まで責任取んなさいよ。

九条はあたしがいなくても平気なの?

「はぁ、なんなの?お前」

こういう時に限って九条の表情も声も穏やかで優しい。すぐあたしの異変に気づいちゃう辺りも本当に卑怯だよ。

好きって感情ってさ、どこかできっと止まっちゃうんだろうなって思ってたけど、全然止まんなくて。日に日に好きって気持ちが膨らんでいく。

やだな、離れたくない。

でも、素直になれない。

だってそんなキャラでもないし。可愛らしく『好き』とか『離れたくない』とか言えない。九条だってそんなあたしを求めてるわけじゃないし、甘えられても困るだけでしょ。

「別に」

「あ?んだよ、なにが不安なわけ?」

「別に」

「ったく、なんだよお前。可愛っ」

『ったく、なんだよお前。可愛くねえ』って言いたいんでしょ?そんなこと言われなくても自分が一番よくわかってる。