俺様御曹司は欲しい

未だにこんなことでドキドキしちゃうってこと九条にバレたくなくて、無の境地を極めるあたし。つくづく可愛くない女だなって思うけど、九条はこんなあたしでもいいって言ってくれる。

九条も九条でこんな女のどこがいいんだか。

「スキスキダイスキー」

「お前感情捨てたんか」

「感情捨てないとあんたの隣にはいられない」

「ハッ、可愛くねえ」

「んっ！？」

不意に近付いてきた九条に反応しきれずガリッと下唇を噛まれたあたし。

「いった！ちょ、なにすんのよ！ここ廊下ね！？」

「なに当たり前のこと言ってんのー？」

「あんたにＴＰＯってものはないわけ！？」

「ねえな、んなもん」

『俺を誰だと思ってんの？あの九条財閥の御曹司にんなもんあるわけねぇだろ。俺が正義、俺がルールなんだよ』と言わんばかりのドヤ顔。もうここまで来ると逆に清々しくて反抗する気も失せる。

「で？」

「あ？」

「なんなの、なんかあった？」

九条は性格以外パーフェクト人間。ほんっと『何者なの？あんた』ってくらいできないことがない。唯一できないことがあるとするなら“あたしを怒らせない”ってことくらいじゃない？性格以外はリアルに非の打ちどころがない。