俺様御曹司は欲しい

「ハッ、でたでた。ごめんなさいマン。礼言いまくるわ謝りまくるわ毎日毎日忙しいやつだねえ」

「うっっざ」

「で?どうした」

あたしがなにか伝えようとしてること、九条はきっと察してくれてるはず。こういう時の声、本当に穏やかで優しいから胸がキュンとなるんだよね。程よく低くて鼻にかかった甘く透き通るようなこの声もめちゃくちゃ好き。

「九条」

「ん?」

「好き」

「知ってる」

「九条は?」

「好きじゃなきゃ一緒にいねえ」

「知ってる」

あたし達はフッと鼻で笑って、特になにを話すわけでもなく背中を預け合った──。

今日バレンタインだったのに“なにも用意してない”っていう彼女としてあるまじき大失態を犯したあたし。ちょっとでも挽回しなくちゃって思って、九条がいなくなったちょっとした隙に血眼になってスマホで検索した。

あたしもあたしで雑すぎるから“男 喜ぶ バレンタイン サプライズ”で検索してパッと目に入ったものを実行することに。

ガサガサとコンビニの袋を漁って余り物のチョコを取り出して脱衣室に向かった。バスローブとか色々揃ってて、その中にお目当ての物はあったんだけど……いやぁ、なんていうか、絶対に間違ってる気がする。

「……いや、これ……本当に大丈夫なの……?」