俺様御曹司は欲しい



── てなわけで、かくかくしかじかでホテルなう。

急な豪雨でたまたま近くにあった九条財閥が所有するホテルに一時避難することになったあたし達。どしゃ降りの雨に打たれたせいか体の芯から冷えきってガクガクブルブル震えが止まらない。だってまだ2月だよ?冬じゃん、寒いじゃん。

「先にシャワー浴びてこい」

「いや、九条の後でいい」

「あ?震えてんだろ、やせ我慢すんな貧乏人が」

「あんたに風邪引かれたら困るの。あたしは九条と違って頑丈な体の造りになってるから平気」

「つべこべ言ってないでさっさと入れよ」

「それはこちらのセリフです。早くお入りください、九条様」

「チッ。ああ、めんっどくせぇな」

「ちょっ!?」

九条の肩に担がれてあれよこれとよと浴室まで連行されて……なんでこった?制服のままシャワーのお湯を浴びるあたし達。

向かい合って、ただただ無言で見つめ合う。

「あの、どういうこと?」

「2人で入りゃいいだろ別に」

「why?」

そして当然の如くあたしに拒否権なんてものは微塵もなく、お互い絶っっ対に見ないことを誓って一緒に入ることに──。

ありえない、ありえない。まだキス以上のこともしたことのないカップルが全裸で一緒にお風呂に入ってるとかありえない。お互い背を向けて、微かに触れ合ってる素肌。