俺様御曹司は欲しい

「いらねーよ」

「いや、あの、一応バレンタイン……みたいな?」

「あ?余りもんかよ」

「じゃあ今から買いに行ってもいい?」

「ダメ」

「え、なんでよ」

「お前さ、この俺に既存品渡すつもりー?信じらんねえ」

じゃあもういい、なにもあげない。

「じゃあ……もういい……です」

どうしろっていうのよ。なにもあげれないじゃん、そんなんじゃ。

なんか思ったよりダメージ食らってる自分にびっくりしてる。だいたい用意すらしてなかったくせに、こんな被害者ヅラみたいなのもよくないよね。

トボトボ歩きながらうつ向いて、この先なにがあっても九条にプレゼントなんて渡せないんだって思ったら悲しくて泣きそうなんだけど。

「はぁぁー。お前さ、馬鹿なの?」

なんでこんな時にまでそういうこと言うかな。わかってるよ、自分が馬鹿だってことくらい。いちいち言わないでよ、特に今は。

「作りゃいいだろ別に。そんな顔すんな、俺がイジメてるみてぇだろ」

イジメてるでしょ、実際。

「俺、飯もデザートも食いもんはお前が作ったやつがいい。ド庶民にしちゃあ悪くないんだよね~、味付けが。たまには貧乏くせぇ飯食うのも悪くはないしな。ほれ、ド庶民の気持ちもわかる金持ちっていいだろ?」

いや、あんたには一生到達できないでしょうね。貧乏人の気持ちとやらには。