俺様御曹司は欲しい

なんか無性に好きって伝えたくなってきた。でも今は違うかな、機嫌悪い時にそんなこと言われても『あ?機嫌取りかよ鬱陶しい』とか思われそうだし九条なら言いかねない。

そんなことを考えながら歩いてると小さな男の子が泣きながらキョロキョロしてるのが視界に入った。パッと見た感じ周りに保護者がいるような気配はない。煌くらいの大きさだし、もしかして迷子?

「あれ迷子じゃね?」

「うわー、かわいそー」

「でも今のご時世話しかけるのもなー」

「ま、なんとかなんじゃね?」

行き交う人は見て見ぬふりっていうか、やっぱ時代かな。人を助けようと思ってもかなりの勇気と覚悟がいる。でも、ほっとけない。

「ごめん九条、あの子……」

あたしの手を取って、なにも言わずその子のところまで引っ張ってってくれた九条。あたしがこの子を助けたいって言わなくてもきっとわかってくれたんだと思う。『どーせお前のことだから助けてぇだのなんだのって言うだろ』って、そう言われてるみたい。

「九条、ありがとう」

「ん」

大好きが止まんないな、ほんっと厄介な男。

「おいこらガキんちょ。泣くな、男だろ」

いや、その脳筋思考やめなさいよ。ほら、この子怯えてんじゃん、馬鹿。あんた黙ってても図体大きくて威圧感半端ないんだからもっとこう優しく──。