俺様御曹司は欲しい

「なによ」

「お前さぁ、もうちょい女子力上げらんねぇの?」

「ハイ?」

「バレンタインなんて女がやりたがる大イベじゃん。なんでお前がそうも無頓着なのか俺にはわからん、理解できん」

うーん。はて、なにを言ってるのだろうかこの人は。だってあたし、もうあげたい人にはあげちゃってるし。あたしの中でもうバレンタインデーは終わってるも同然。

今日から九条が貰ったチョコだのなんだのを腐られせる前に食べきんなきゃ!って気合い入れてるところなんだけど?九条目当てで渡してくれた人達には悪いけど、食品ロスは貧乏人のあたしにとっては許しがたきなの、だからどうか許して。

「もうあげたい人(お世話になってる人)にはあげたし」

「は?」

九条の口からガチトーンの『は?』が飛んできて、さすがのあたしもビビり散らかしております。

「いや、だからお世話になってる人にはっ」

「誰にやったんだよ」

今、目を合わせたら間違えなく目力だけで殺される。冷や汗をダラダラ垂らしながら完全に怒っているであろう九条に嘘偽りなく誰に渡したかを伝える覚悟をした。

「えっと、お母さんお父さん律に慶に煌でしょ?それから梨花と美玖と拓人っ」

「あ?もういっぺん言ってみろ」

「たっ、た……たくっ」

「お前さ、なんっでこうも俺を苛つかせるかね」