俺様御曹司は欲しい

「お前、俺が浮気する男だと本気で思ってるわけ?」

「いや……違う、本気でそんなこと思ってはない」

「ったく、んなもんするわけねぇだろ。だいたいこの俺にそんな暇ねぇのお前が一番よく知ってんだろうが。こんの馬鹿女が」

「ご、ごめんなさい」

すると、あたしを鼻をグニッと摘まんでグリグリし始めた九条。痛すぎて半泣き状態の哀れな絵面完成。

「俺、お前をそんな不安にさせてるか」

あたしの瞳から目を逸らさず、真面目な瞳と改まった声でそう言った九条を見て罪悪感に押し潰されそうになった。

「不安にさせてるりつもりねえんだけど?」

うん、伝わってる。あたしを大切にしてくれてることも、なによりも優先してくれてることも、好きだってことも……全部伝わってるよ。

でも、あたしが全てにおいて見合ってないの。釣り合ってない、劣ってる。

『九条財閥の御曹司である九条の彼女がこんなあたしでいいのかな?』なんて言えない。だってこの言葉は九条を傷つけちゃう。

あたしだって別に九条財閥の御曹司を好きになったわけじゃない。九条柊弥を好きになったの。けどやっぱり考えなきゃいけないことだってある。この先もずっと長く九条と一緒にいたいなら尚更。そこは切っても切れない問題でもある。