トップシークレット

「へぇ、君が千帆ちゃんかぁ。かんわいいねぇ」

「どうも」

「ヒヒッ、本当にひとりで来たんだぁ?」

「ええ、そういう約束なので」

ニタニタした笑みを浮かべてる誘拐犯が気持ち悪い。なんか変なクスリやってんじゃないの?これ。

「クククッ、君って治癒力高いんだってぇ?」

ドキッと心臓が飛び上がった。でも、それを表情に出すわけにはいかない。焦りを悟られるのは命取りになる。

「なんのことでしょうか?」

面倒なことになる前に倉田篤史を奪還したい。亮くんはどこにいるんだろう。あまり周りをきょろきょろと見渡すわけにもいかないから、相手にバレないよう目の動きを最低限に抑えつつ辺りを確認してみた。天上に亮くんがいる。下は無理だと判断して上に行ったんだ。

「俺らの界隈じゃ君は有名人だから~。S専も馬鹿だよねぇ。駒を減らしたくないが為にこぉんな貴重な人材を表に出してくんだもぉん。トップシークレットの意味ないじゃーん。こういうのは隠しとかなきゃねぇ?」

下手な合図をしたら倉田篤史に危害が及ぶかもしれない、相手は拳銃もナイフも所持してる。亮くんなら気づいてくれる、こんな些細なことでもきっと。

「“あたし”がトップシークレット?ははっ、笑える」

パパンッ!!と銃声が響いて両肩を撃たれた誘拐犯は崩れ落ちた。その隙に素早く手足を拘束する。ちなみに亮くんが使ったのは低致死性銃、威力はかなりあるけど貫通しない拳銃を使ったから、酷く痛みはあるだろうけど出血はしない。辺りどころが悪いと最悪死に至る可能性はあるけど、そんなヘマを亮くんがするはずもなく。


「よかったぁ。“合図”ちゃんと気づいてくれて」

「ええ、貴女らしい合図でしたね」

「ははっ、ありがとう。ていうかマジで焦ったね~?もぬけの殻すぎちゃって」