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「病み上がりだからって手ぇ抜くわけにはいかねぇんだわ。悪いな、白浜」

「はぁっ……はぁっ、あーやっぱ先生だよね……っ、マジ最悪」

「油断してっからそーなんだよ。どうする、このまま適応するまで我慢するか解毒剤使うか。一応持ってるぞ~?解毒剤。ほれ」

ポイッと適当に解毒剤の入った小瓶をわたしに投げてきた先生にイラッとしつつ、受け取った小瓶をトン……とベンチに置いて目を瞑った。

「おいおい、さっさと飲めよ。今すぐどーのこーのできるもんじゃっ」

「黙ってて……っ、集中力するから」

呼吸を最小限に抑えて、わたしの治癒力を毒の分解に全振りする。こういうのは頭で考える必要はない、要は直感というアバウトなもの。脳で考えるより先にわたしの細胞が動いて、その後に思考がついてくる。

苦しい、怖い、死への恐怖、それらも全て消し去るの──。

でもこれの冷静さは解毒剤ありきな部分も大きい。常に解毒剤がある環境で訓練してきた。現に今も手元にある……だからこれはわたしの強さだと履き違えちゃダメだってこと、ちゃんと分かってる。

「すぅーーふぅーー。はぁ、しんどかった」

「ほぉ、やるなオメェ。俺でも1時間かかったぞ?適応すんのに」

「……は?いや、はあ!?え、いやいや、バケモノですか!?」

待って待って、この人マジか。普通は無理なのよ、普通は毒に適応するなんて無理なのよ。無理なものを日々の訓練でなんとかしてるだけであって、だいたい普通の人は1日で少量ずつ、ほんの微量ずつで慣らしてくもんなのよ普通は!

「俺がバケモノならオメェはなんだ?カイジュウか?オメェのほうが十分バケモノ染みてんだろ。う~、コワイコワ~イ」

なんて言いながら煙草を吹かす先生をジト目で見るわたし。

「先生、デリカシー無いってよく言われません?」

「んあ?知らねーな、抱いてくださいとはよく言われるが」