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流星くんに話を振られた亮くんをチラリと見てみると、眼鏡をカチッと上にあげながら少しだけ目を逸らして『ええ、まあ』と言いながら死ぬほどテンションが低い。なんなら不機嫌そうっていうか、怒ってる……?わたし亮くんを怒らせるようなことして……るわ。してるわ、がっつりと。

無理やりあんなキスされたら嫌だよね、気持ち悪いよね、怖いよね。嫌われちゃったかな……それもそうだよね、こんな奇妙な女に無理やり血飲まされたとかトラウマレベルマックスすぎるよね。

いや、でもさ?あの時の亮くん、このお堅い感じとは違ってなんかこう……すごくえっちだったというか、積極的?みたいな感じだったし、お互い様……みたいな感じじゃない?だいたい、あれは別に深い意味はないっていうか治癒だし……そう、わたしは損傷の処置を行ってたわけであって、別に下心なんてないし!あれは処置の一環だもん!相手が流星くんだったとしてもわたしは同じこと……できたのかな……いやいや、できる、できるしやるし!

たしかに一目惚れしちゃったよ?亮くんに。もう既に好きなんだと思う、好きが加速するばっかだけど、でもこの気持ちがラブなのかライクなのかまだ分かんないのも否めない。そもそも昔のことがあってから恋愛から遠退いてたし、その辺の感覚が小学生止まりで……とかヤバくない?高校生にもなって恋愛の価値観が小学生止まりってこれ重症だよ。

「おい、千帆」

「え、ああ、はい」

「大丈夫か」

この声のトーン、この表情、これは本当にわたしのことを心配してる時の氷室先輩だ。なんだかんだ優しい氷室先輩のことは微塵も尊敬はできないけど好き。この好きはどっちかなんて明確で、ラブじゃなくライク。圧倒的後者なんだよね。氷室先輩からしてもわたしなんて生意気な後輩だとしか思ってないと思う、これマジで。