「で、なんなんですかここは」
「飯屋……じゃなさそうだよなぁ」
「中華食べに行くって話はどこ?」
わたし達が連れて来られたのは中華屋さんではなく、似ても似つかない結婚式場だった。状況が呑み込めず疑問符がプカプカ浮かんで、亮くんに至ってはなんかブチギレ寸前だし。意外と短気なのかな?亮くん。
「飯前の運動っつーもんが必要でしょうが」
ニヤッと悪い顔をして笑う先生に嫌気が差したのはわたしだけじゃないみたい。なるほどね、いきなり任務パターンってことか。まあ、この先生ならやりかねないというかやるでしょうねとしか言いようがない。
それに敵だって待ってはくれない、いつだってどこからでも狙ってくる。『急じゃん、なにも準備してないし』なんて言葉は通用しない、これがわたし達の生きる世界。それは亮くんも流星くんも理解して瞬時に気持ちを切り替えたはず。
「依頼内容は」
「結婚式に僕達を派遣するなんて物騒だよなぁ」
「血塗られた花嫁とかシャレになんないし」
なんて言いながらわたし達はインカムを付けて、全員しっかり音が拾えているかの確認をしオッケーサインを送り合う。
「任務内容は至ってシンプルだ。S専に多額の寄付を行っている財閥ってのが複数存在する。まあ、それで俺達が成り立ってることも一応頭の片隅には置いておけ~。で、そのお偉いさんの孫が今日結婚すんだとよ。S専との繋がりがある以上、Xに狙われてもおかしくはねぇわな?要するにビビってんだよ、上の連中もお偉いさん方も。んで、護衛と警備をって話だ」
いやいや、いきなり任務ランク高めじゃない?S専の上層部と財閥のお偉いさん達が絡んでるなら尚更わたし達じゃなくて氷室先輩達を充てるべきでしょ。わたしは一応任務経験はあるけど、流星くんも亮くんもこれが初任務だよ?荷が重すぎない?



