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そして、超絶イケメンと結婚できますように。そんなことを思いながら重すぎる足取りで歩いていると、ビュンッと肌寒い風が吹いて桜がヒラヒラ舞い散る。その風があまりにも強くてあたしは立ち止まり、思わずギュッと目を瞑った。すると、桜の匂いと共にフワッと香ってくる爽やかでほんの少しだけ甘い匂い。

「大丈夫ですか?」

ちょっと無愛想だけど程よく心地のいい低い声、これは俗にいう“イケボ”というやつ。あたしはギュッと強く瞑っていた目をゆっくりと開けながら、声の主を見上げる。目と目が合った瞬間、ゴクリと息を呑み込んだ。

なんでだろう、時が止まったような感覚に陥って、彼の瞳から目を逸らせなくなった。呼吸をする、そんな当たり前のことですら忘れてしまうほど、あたしの時は止まってしまう。これはきっと、一目惚れ。全身に電流が走ったみたいにビビッと来た。うん、間違えない。これはきっと“運命”だ。そう思わずにはいられない。

あたしの目の前にいるのは、眼鏡をかけてちょっと真面目そうな黒髪のスラッとスタイルの良い高身長男子。真新しいS専の制服を着ている。そんな黒髪男子をただただ目を見開いて見上げることしかできなかった。永遠にこの時間が続けばいいのにとすら思ってしまう。いや、永遠に続いたら死ぬ、呼吸ができなくてまもなく死ぬ!

「……あの、なんでしょうか」

眉間にシワを寄せて、ほんの少し嫌そうな顔をしながらあたしを見下ろしてる。ど、どうしよう、なにか言わなきゃ!そう思ってもなぜか声が出ない始末。なにこれ、めっちゃ緊張してる!?誰かと話すのにこんなにも緊張したのって、氷室先輩と初めて話した時以来かもしれない。ていうか、氷室先輩よりも緊張するかも。

「すみません。私はこれで失礼します」