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「いいねえ、気に入った。俺が全部揉み消してやるから安心しろ、オメェを買ってやる。だから、俺の為に働け」

もうなんでもいい、なんでもいいから縋りたい。過労で弱っていく母の姿も、この状況に怯えながら暮らす弟の姿も、もう見たくはない。

「はあ、ご勝手に」

S専入学の経緯なんてこんなもの。私は羽田野先生に買われた情けない男、ただそれだけのことだ。こんな男に誰かを好きになる資格も愛する資格もない。もとい、女性との関わりは避けてきただろ。私なんかと関われば不幸にするだけだ。相手だって私の家庭環境を知れば必然的に離れていく。男女に限らず何度かあっただろ。だから他人に興味はない、ないはずだった。それなのに、よりによって私のような男が白浜さんのような強く美しい女性になど言語道断すぎて話にならない。

私は、貴女とは何もかも違う。

「僕、鳴海の隣だし別に気にすることなくねぇか?同期だし近くにいたほうがいいじゃんか、な?白浜」

「うん、わたしも全然気にしないよ?」

いや、気にしろ、気にしてくれ頼むから。その辺の感性バグりすぎていないか?あなた達は。年頃の男女がひとつ屋根の下、隣室同士など本来あってはならない。別に私が白浜さんにどうのこうのしようなんて気持ちは更々ない。だが、万が一の話だ。それに櫻井もいる、櫻井も男だ。危ない、何が起こるかなんて分からないだろ。

「ダメです。羽田野先生、私と櫻井の部屋をっ」

「鳴海、今日から1ヶ月間常に狙われているものと思え。これはテストみたいなもんだ。いいのか~?白浜から離れても。俺なにしでかすか分かんねぇぞ~」

この人、楽しんでやがるクソッタレが。

「……分かりました、このままでお願いします」

「おうよ。恋だの愛だの自由にやってくれて構わんが避妊はしっかりしろよ~?あと任務もしっかりとな~」