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『寮だのなんだの案内してやるからついて来い』

そう言った羽田野先生について来たのはいいんだが、これは一体どういうことなんだろうか。何故こんなことになっている、理解に苦しむを通り越して呆れてものが言えない。

女子寮男子寮が分かれていない上に白浜さんと隣室とは。空室なんて幾らでもあるはずだろう。よりによって白浜さんと隣室なのは何故なんだ。これはどういった意図がある?いや、おそらく何も考えていないだろう。馬鹿なのか?この人は。

「羽田野先生」

「んあ?なんだなんだ~、俺に感謝してぇならイイ女紹介っ」

「部屋、変えてください。ありえないでしょう、馬鹿ですか?貴方は」

「あ?ああ、なるほどね?やらしいなぁ、鳴海ィ。やっぱオメェむっつりかぁ?意識しすぎだろ、鳴海のエッチ~」

はっ倒したい、今すぐに。だが、こんな人でも私にとっては恩人になるわけで心底嫌気が差す。なんでこんな人がとしか思えないが、この人が私の才能ごと買ってくれたようなものだ。

父が遺したのは多額の借金のみ。母は懸命に働いた、私と弟の為に。それでも支払いが間に合わないのが現実で、闇金に手を出していた父のせいで借金取りが毎月ひとしきり暴れてはあるだけの金だけをむしり取っていく。これがもう当たり前になっていた。あの日まで母にも私達にも直接的に手を出すことはしなかった借金取りが、弟を売り飛ばす為に連れ去ろうとしていた現場に遭遇。

私は初めて殺意というものが芽生えた。

気付いた時にはもう借金取り達は瀕死の状態だった。私は返り血を全身に浴びて、ただ転がっている連中を無の感情で見下ろすことしかできず、その時そこに現れたのが羽田野先生だった──。

「金に困ってんのか~?」

「貴方になんの関係が?」