ガチャッ、屋上のドアが開く音がしてガチャンとドアが閉まる。コツコツとわたしに近付いてくる足音。そして、わたしの少し後ろでピタリと止まった。
「白浜さん」
振り向く必要なんてない、声で誰だか分かる。
「貴女が責任を感じることはありません」
やめてよ。
「貴女は何も間違えてなどいません」
やめて。
「白浜さん、貴女は何一つ間違えてなどいませんよ」
ごめん、もう無理だよ。わたしは後ろへ振り向いて、怒鳴るように声を荒げた。
「分かったような口聞かないでよ!!なにもかも間違えたから姫野さんがもうこの世にいないの!!」
「それは貴女のせいではないでしょう」
「じゃあ誰のせいなの!?あの時わたしが判断を間違えなければ、姫野さんはあんなことになってない!!姫野さんは……姫野さんには婚約者がいたの。『そろそろ結婚かぁ』って嬉しそうにしてた。なのに、わたしが姫野さんの人生を奪ったんだよ!?S専を去る時……姫野さんは笑顔でこう言ってた。『これを機にSP辞めれて結婚もできちゃうし、なんだかんだ結果オーライだわ~』って」
亮くんの姿が見えなくなるほど、わたしの目から涙が溢れ出る。泣いたって許されるわけでもない。そもそも泣くことすら許されるわけがない。でも、辛くて苦しい。わたしはあの時、姫野さんの言葉を鵜呑みして姫野さんの笑顔に救われて、心の底から『よかった、幸せそうで』って責任逃れをした。
あれはわたしに責任を負わせたくなった姫野さんの無償の優しさだったんだって、なんで……どうして失ってからしか気付けなかったのよ。
「……っ、あんなの嘘だってっ……どうして気付けなかったの……っ」



