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弱くて、脆くて、何者でもなくて、何者にもなれなかったわたしは、ただ泣き叫ぶことしかできなくて、打ちひしがれる。大切な人を救える力を持っているのに、なぜ大切な人を救えないのか。救えるはずなのに、救いたい人が目の前にいるのに……わたしは救うことさえ許されないのかと絶望した。

「「千帆!!」」

「ガキんちょ!」

そこへ現れたのは皐月先輩と二階堂先輩と氷室先輩だった。

「……た、すけて……助けてっ……お願い」

掠れる声で情けなく助けを求めたわたし。本来、助けなきゃいけなかったのはわたしだったのに。

先輩達は姫野さんの状態を見て表情を曇らせた。それもそうだろう。誰がどう見たって容態が悪かった。救ってもらって救えなかったわたしの末路がこれなんだ。

「鈴、姫野さんどうにかしろ絶対に。んで大翔、オマエは鈴と姫野さん松下さんを死守、これも絶対な。おら、さっさと行け」

氷室先輩の指示で姫野さんを抱え上げた松下さん。

「……っ、白浜ちゃん……ごめんね?……あの人達を助けてあげて。私のことは……本当に気にしないで」

そして3人は走り出してわたしはそれを追いかけようとした、でも氷室先輩に止められた。

「嫌、嫌だ……姫野さん!まって……待ってよ!あたしの血なら何とかなるかもしれない!だからっ、だからっ……!」

わたしの声はもう、届かない。

「おい、ガキ。オマエはあそこに転がってる奴らの治療に専念しろ。俺がオマエを守ってやる」

「── だ」

「あ?」

「嫌だ!!」

わたしは姫野さんのもとへ行こうと氷室先輩に背を向けて走り出そうとした。

「オマエなんっも分かってねぇな。千帆、オマエは姫野さんに“なにを”託された」

“なにを”託されたかなんて、そんなの知らない、どうでもいい。わたしはただ、姫野さんを救いたい一心だった。