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どこからともなく声が聞こえて、亮くんと流星くんは真っ先に上を見上げた。わたしはワンテンポ反応が遅れて上を見上げようとすると、亮くんがわたしを庇うように前に立ってわたしを後方へ下げた。この時点でわたしはもう使いものにならないと判断されたも同然。それもそうか、わたしは足手まといでしかないんだから。

亮くんは天井に向かってスパンッ!!となにかを投げた。速すぎてなにを投げたのかは分からない。よく目を凝らして見てみると、銃口にボールペンが突き刺さっていた……え、ボールペン?いや、ボールペンだよね、あれ。ボールペンって、ああいう使い方で合ってる?今流行りの使い方かな?

ははは……いや、合ってるわけがない。ねえ、待って、ちょっと待って。ピンポイントに銃口へボールペンを突き刺す亮くんって一体何者?ヤバくない?ボールペンで人殺められちゃうよね?ボールペンってそんな使い道があったの?初知りだよ。ボールペンは字を書く為だけに存在してる物だと思ってたんだけど?

「まあ、まずまずかぁ?」

そう言いながらひょいっと天井が降りてきた誰か。わたしはひょこっと亮くんの背後から顔だけ覗かせてその声の主を確認してみる。そこにいたのは、紛れもなく死んだ魚の目をしている男だった。

「おい、白浜ぁ。オメェ今すんげぇ失礼なこと思ってんだろ。そんな奴は廊下に立ってなさぁい」

鼻をほじりながらわたしと亮くんに近付いて来て、鼻をほじった手を私へ伸ばしてきた。その手を亮くんがパチンと振り払う。

「んだよ、つれないねぇ~」

「その手で彼女に触れないでいただきたい。一体なんなんですか」

わたしを守ってくれている亮くんの広い背中がとても大きくて、頼もしく感じる。『鼻をほじった汚い手で彼女に触れないでいただきたい。衛生観念バグってるんですか?貴方は』きっとそう言いたくて省略しただけだとは思うんだけど、『彼女に触れないでいただきたい』この言葉にドキッと胸を弾ませてしまった。