ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

「司君の?」

「そう。……俺さ、まだ他人の血飲んだ事ないんだ。」

 私から目を逸らしたまま、ぽつりとそう言った司君。

 ……血を飲まない、飲みたくないって考えるヴァンパイアは少なからずいる。

 だけどたまには新鮮な人の血を摂取しないと能力の暴走が引き起こるって、朝翔君が教えてくれた。

 司君もそう分かっているから、こんな後ろめたそうにしているのかもしれない。

 私はそんな事で責めるつもりなんてないけど……どうして飲んだ事がないのか、少し気になった。

「……嫌なら言わなくてもいいんだけど、何で吸血した事ないの?」

 恐る恐る、小さな声で尋ねてみる。

 それを聞いた司君は伏せていた目を少し開けたけど、視線は下げたまま。

 まぁ、こんなデリケートな話言いたくないよね……失礼だったかな。

 司君の反応を見てより気まずくなってしまい、とりあえず謝ろうと息を吸う。

「――怖いんだ。吸血して、能力が強化されて発動されるのが。」

 すると司君の、震えた声が聞こえた。

 ハッと驚いて見つめると、体も少し震えていて普段の余裕な態度からは到底想像できない司君が目の前にいた。