ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

 何も事情を知らない人からは泥棒猫だと思われて仕方ないし、彼女たちがどう思おうが事実だから何も言い返せない。

 ……でも、これだけは見過ごせなかった。

「どうしてそこで、乙華の名前が出てくるんですか……?」

「あら可哀想に。榊原さんが嫌われてる事も知らなかったのね。なら教えてあげる、榊原さんって結構気が強いでしょう? 人の話も聞かないし話に合わせてくれないし、一緒にいても面白くないから初等部の時からずっと嫌われてるのよ?」

 言葉を濁す事なく、はっきり口にした彼女は悪びれる様子もない。

『友達? 友達と言えるのは暁だけよ! ……わたくしと友達になりたい物好きなんて、暁だけだし。』

 ずっと前に、何気なく尋ねた言葉があった。

 それに返ってきたのは悲しそうな表情と力ない言葉で、その時は全然意味が分からなかった。

 だけど……やっと分かった。それが本当なら、乙華はずっと一人で……。

「……今の乙華は、そんなんじゃない。」

「え?」

「昔の事なんて私には分からないけど、これだけは私にも言えます! 今の乙華はそんな人じゃありません!」