ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

『望さん? う、嘘だよね望さん……何で目、覚まさないの? ねぇ……っ!』

 すっかり暖かくなって、春の無邪気な陽気はヴァンパイアには少し痛い。

 でも、それより痛いのは……1年前に傷がついた心で。

「……っ、はぁ、はぁ……っ、はー……夢、か。」

 今でも夢に見るくらい、呪いと化している。



 たった1年、されど1年前の出来事。

 有明学園は中等部に進学してからじゃないと寮に入る事は許されなくて、その時はセキュリティがしっかりしたマンションに一人で住んでいた。

 両親はいるけど、家に帰ってきてくれない。帰ったとしても1年に一度あるかどうかだ。

 生活費諸々は定期的に送ってくれるし、俺自身も家事はできるから生活の心配はなかった。

 それでも、幼い頃から心に空いた穴は塞がらないまま。

 両親が家に帰ってこない理由は分かっている。大手貿易会社を経営しているから、と……俺のDNAが、かつての大罪人と一致したからだろう。

 そのせいで『大罪人の血が通ってる』や『危険なヴァンパイア』とずっと言われていて、敬遠されて過ごしてきた。