ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

 そ、そんなの分かるんだ……ヴァンパイアってすごいな……。

 自分の薄い傷を眺めながら相槌を打っていると、不意に司君が私の右手の甲に触れた。

 そのまま口元まで持ち上げ、じっと痛々しそうに傷を見つめた後。

 ……ちゅっと、口付けた。

「なっ……! 司君っ、何して――」

 って、あれ……? 傷が、ない?

 離された手を急いで見てみると、そこにあった切り傷は元からなかったようにすっかり消えていて。

 見れば見るほど綺麗さっぱりなくなっている手の甲を見ながら、司君の様子が少しおかしい事に気がついた。

「司君? ぼーっとしてどうしたの?」

「……っ、いや、何でも。」

 手を目の前でヒラヒラさせてそう言ってみると、現実に戻ってきた司君は慌てたようにそっぽを向いた。

 どうしたんだろう……。

 明らかに何か隠してる様子の司君を訝しげに観察して、もう一度声をかけようと口を開く。

「司く――」

「ごめん、俺ちょっと帰らなきゃだから……また明日。」

「え、ちょっと待って! ……って、行っちゃった。」