ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

「ありがとうっ!」

 優しい乙華の言葉に背中を押され、ちゃんと例の部屋に足早で向かう。

 今度は迷いなく歩を進められ、人気が全くと言うほどない第3校舎。

 緊張と未知数な未来に嫌な鼓動を立てる心臓に、鎮まれ……!と念じながら4階に辿り着いた。

 ……瞬間、体全体に違和感が走る。

「これ……能力だ。」

 突然の事に取り乱しかけたけど、覚えのある異常に落ち着きを取り戻す。

 ヴァンパイアの能力の一つに、相手の動きを止めるものがある。それを今されているようで、私の体は自由が利かない。

 でも私は対処を知っている。こういう能力を解除するには……こうだ!

「えいっ!」

 小さい掛け声と共に、全身に力を込めて右手を真横に思いっきり動かす。

 すると目論見通り解除できたようで、体の自由が戻った。

 全身に異常がないかも確認した後、ふぅ……と一旦呼吸を整える。

 その時、すぐ傍の物陰から話し声と雪崩のように監視対象のヴァンパイアが出てきた。

「わぁっ! つーくんの言う通り本当に解除しちゃったよ……! 嘘じゃなかったんだーっ!」