ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

 夢中になってくまなく扉を触っているとその時、昨日よりも低い声が頭から浴びせられた。

「そんなところにいたら埃っぽくなるよ。」

「っ!?」

 ギクリ、と漫画さながらの音がなった気がした。

 予想はついているけど誰なのかはっきりさせたくて、そーっと視線を声のしたほうに向けてみる。

 すると予想通りというか、そこに佇んでいたのは監視対象の壬生司。

 とんでもないところを見られてしまったと焦りつつ、慌てて立ち上がり愛想笑いを浮かべて踵を返す……も。

 それがあからさますぎたのか、いじわるに声をかけられてしまった。

「逃げないでよ、別に何もしないから安心して。ただ昨日のお礼を言いたくて、ここに来たらいるかなって思っただけ。」

 にこっと感情の読めない笑顔を浮かべる壬生司は、どう見ても裏がありそう。

 疑り深くなるのは良くないと分かってはいるものの、あまりにも作ったような表情に違和感さえ覚える。

 だから私も、彼と同じように演技をしてみようか。

「そうだったんだ、わざわざお礼なんていいのに。」