ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

「わ、わたくしもあまり細かい事は知らないけど……中3だった先輩と一緒に誰かに攫われて、壬生君が攫ってきた人を息の根が止まる寸前まで痛めつけて、そのまま凶暴化してそれを押さえつけようとした先輩が、意識不明になった……って。」

「その先輩の名前って、分かる?」

「えっと……圷望(あくつのぞみ)先輩、だったような……」

 ……ようやく分かった、どうして壬生司が危険だと言われているのか。

 圷望さんは、春君のお兄さん。そして私と同じ刑事課のヴァンパイアハンター。

 望さんは去年の春とある事件で緊急搬送されてから、一命はとりとめたもののリハビリが必要な体になってしまった。

 今は生活できるようになったものの、ハンターを続ける事は難しくなり通信制高校に通っている。

 そっか、望さんが監視役だったんだ……。

『俺は絶対、兄貴をあんな身体にしたヴァンパイアを許さない。』

 望さんが入院してから、事あるごとにそう言っていた春君。

 ……もし、春君と壬生司が会ってしまったら。

 そんな事を想像するのも怖くて、言葉が喉につかえる。