ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

「蘭君……」

 今にも泣きそうな震えた声が、耳元のすぐ近くで聞こえる。

 どんな表情をしているかは分からないけど、きっと悲痛に歪んだ悲しい顔をしてるんだろうなって予想できてしまった。

 蘭君に何があったかこれだけじゃはっきり見えない。でも話はざっと掴める。

 ヒートブラッド病はトラウマを想起させる特徴もあったはずだから、蘭君にとって離れられる事が今一番嫌なんだ。

「……ここにちゃんといるよ、蘭君。ほら、確認してみて。」

「暁ちゃ……」

 蘭君の力が弱まった瞬間を見計らって腕の中から脱出し、目の前で屈んで目線を合わせる。

 そして右手を広げ、タッチするように蘭君に触れた。

「ね、私はここにいるよ。それでも嫌?」

「……うん。暁ちゃんもどうせ、俺のこと嫌いになるでしょ。だから――」

「蘭君が悪い事しなかったら嫌いにならないよ。」

「っ……悪い、こと……」

 悪い事、という単語に蘭君は異常に反応する。

 まるで怯えているように肩を震わせて、触れている熱い手からもそれが伝わってきた。