ヴァンパイアくんに愛されるのは危険すぎる!

 そ、そんなに煽ったら春君が怒るんじゃ……! 司くんも煽らないで……!

 傘を痛いほど握りしめてハラハラしている私の隣、煽られた春君は……完璧な笑顔を浮かべていた。

「昨日は急にごめんね。でも、この子俺の幼馴染だから積もる話もいっぱいあったし許してほしいな。」

 ……だけどこの笑顔は“表面上”。あまりにも嘘を貼り付けていた。

 司君も作り笑顔は上手だ、私や春君以外には自然に見えているだろう。

 でも、春君も負けていない。春君のは自然すぎて違和感を覚えないっていうか……これが素なんじゃないかと錯覚してしまうほど。

 表は人当たりのいい好青年、裏は厳しく優しさの欠片もない。

 その変わりようは私を助けてくれた弥虎君と同じくらいで、春君曰く本心を読み取られたくないからだとか。

「別に怒ってないですよ、そんな事で怒るほど心は狭くないので。」

「あぁ、ならよかった。昔から暁って妙に人たらしというか、変わった奴に好かれやすいから安心したよ。」

「そういえばお名前聞いてませんでしたね、教えていただけますか?」